1個10円。アタリつき。
みんな大好きフィーバーガム。
つつみ紙の裏に、心臓どきどき、数字が三つ。
同じ数字がそろったら、大きな声で叫ぶんだ。
フィーバー!
333で、フィーバー!
888で、フィーバー!
数字が三つそろったら、それがアタリというわけで
ラッキー! おめでとう。
と、めでたくもう1個もらえるのが、まいどおなじみ、フィーバーガムだ。
そのへんを歩いている100人の小学生に、「ガムは?」と問えば、99人が「フィーバー!」と答える全国共通大人気。
それがフィーバーガムなのだ。
数字が三つそろったら、声をそろえて、
フィーバー!
Uh─ フィーバー!
そして、忘れてはならないのが、
777・スリーセブンだ。
そろった数字のなかでも、777は特別の「スペシャルフィーバー」なのだ。
これをハガキにはって、製造元の三橋ガンバ製菓に送ると、おお太っ腹。子ども用のスロットマシンをもれなくプレゼント。
ただし、777はスペシャルフィーバーというだけあって、めったに出ることはない。
シローはもちろん、友だちで出したやつだってひとりもいない。
それがきびしい現実なのだ。
だから、みんなは口をそろえて、
「777なんて、はじめっから、この世には存在しないんだ!」
と、いうのだけれど、フィーバーガムのつつみ紙を開けるときは、やっぱり、どきどき真剣勝負。
神様お願い。
イカサマいけない。
英語で夏はサマーです。
777でスペシャルフィーバー!
というわけで、777はだれもが夢みるスペシャルフィーバーだけれど、ほかの数字でフィーバーすることはときどきある。
333とか。999とか。666とか。
シローも3回出したことがある。
友だちのなかには、ダブルフィーバーを出したやつもいる。
フィーバーを出して、アタリでもらったもう1個が、これまたフィーバー。
それがうわさのダブルフィーバーだ。
うーん。一生に一度はダブルフィーバー!
それがシローの夢だけれど、フィーバーガムの話は、まだまだそのぐらいでは終わらない。
777の「スペシャルフィーバー」の正反対は、444の「死(4)のフィーバー」
出したやつは4日以内に死ぬという、全国の少年が恐れるフィーバーだ。
それは、ただの「うわさ」ともいわれる。
しかし、真相はわからない。
こんな話がある。
山にかこまれた、いなか町のできごと。
シローと同じ小学三年生の少年。
その町の町長の息子。お金持ちの息子。
お金持ちの子どもとはいっても、お菓子が好きなのはかわらない。
そう。その少年は、フィーバーガムの大ファンだった。
そして、少年は444、死のフィーバーを出した。
しかし、少年はそのガムを食べた。
「死のフィーバーなんて、ただのうわさだ」
そういって、だ菓子屋で、444のアタリと、ガムを交換した。
少年は、4日後にダンプカーにひかれて死んだ。
ソク死だったという。
少年の友だちは、ふるえながらいった。
「死のフィーバーの、のろいだ」
少年の父、町長は怒りくるった。
三橋ガンバ製菓にかけこんだ。
しかし、三橋ガンバ製菓の社長はいった。
「444のフィーバーは作っていません」
その後、町長は少年が買っただ菓子屋に行ったが、アタリで交換したはずの444のフィーバーは、見つからなかったという。
それでも、少年の友だちは、だれもが口をそろえていった。
「まちがいないです。確かに444でした」
・・・これが、ただの「うわさ」なのか。
ほんとうのことは、だれも知らない。
444の死のフィーバーで死んだ、いなか町の町長の息子のことを考えると、恐ろしくて眠れない。
しかし、フィーバーガムはやめられない。
フィーバーガムの楽しみかたは、数字をそろえるフィーバーだけではない。
たとえば、877。
あーん。
もう少しで、スペシャルフィーバーだったのに!
ということではなくて、877は「バナナ」と読む。
だからなに?
それがどうしたの?
うーむ。そういわれてしまうと、全国のフィーバーガムファンはこまってしまうのだけれど、三つの数字がなにかのことばになっていて、それがおもしろいではありませんか。
184・イワシ
831・野菜
298・肉屋
それでは、ここで問題です。
874は?
はなし(話)?
いえいえ。ちがいます。
こたえは「鼻血」です。
ほ・ほ・ほ・ほ・ほ・ほ!
おもしろくない?
くだらない?
いいや。ぼくたち小学生なんて、しょせんはそんなもんですよ。
だれかが874を出したら、
「鼻血!鼻血!鼻血!」と、絶叫しながら追いかけっこをするのですよ。
ああ、おもしろい。おもしろい。
そうそう。まえから気になっていたのが、しょっちゅう出てくる384。
これは異常といってもおかしくないぐらいに多くて、みんなで「なぜだ。なぜだ」と話していたのだけれど、最近になってなぞがとけた。
おおっ!
フィーバーガムの製造元は三橋ガンバ製菓だったではないか。
そうなのです。
社長の名まえが三橋(ミハシ)で384。
なるほどナットク。
たとえばえらい画家がじぶんの絵にサインをするようなものだということで、一件落着したのでした。
それからそれから、三つの数字には人をばかにしたようなメッセージがこめられていたりもするのです。
596で「ご苦労!」ときたもんだ。
ぼくたち小学生が少ないこづかいを使ってやってるというのに、それが「ご苦労!」とは、頭にくるではありませんか。
まあ、それをぼくたちは楽しんでいるんだけどね。
でも、184で「イヤよん」なんて、かわいい声でいわれても
ハズレはハズレじゃねえか!
へんっ!ばかにすんなってんだい。
きょうだってシローは、行きつけのだ菓子屋のタダミセで買ったフィーバーガムに、674で「むなしー」といわれたのだ。
くそっ!
「むなしー」だってぇ。
ジョウダンじゃねえ。
しかし、674で「むなしー」というのは、シローの記憶では、いままでに見たことがない。
それで、「よーし、友だちに見せてやるか」と、「むなしー」つつみ紙をお気にいりのパーカーのポケットにつっこんで、鼻歌ふんふん帰ってきたのだ。
そうそうそう。
そうなんだ。
そのときは、まちがいなくポケットの中にはなにもなくて、得意の自転車片手ばなしで、「むなしー」を入れたポケットに手をつっこんで、もぞもぞもぞ。指先がなにかにふれた。
そうなのだ。
そこにはどういうわけか、まだつつみ紙を開けていない、新品のフィーバーガムが入っていたのだ。
ぼくちゃんのポケットに
フィーバーガムがはいってたよ
まったくおぼえがないんだよ
なんでどうしてポケットに
フィーバーガムがはいってるの?
なんで? どうして?
うーむ。わからない。わからない。
・・・えーい、おりゃっ!
ブランコの後ろの桜の木に、まわし蹴りをくらわせた。
しかし、なんのこたえも出てこない。
なんでだあ?
- 『フィーバー!』
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